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2024.12.25
ルールブックの書き換えと即興演劇
自ら変化を作り出す
いつの時代も「時代の変化に対応する」ということは言われます。しかし「自ら変化を作り出す」という言葉には、積極性と創造性の要素が込められています。
変化を待つだけでなく、自らの行動で新たな価値を生み出すことは、他人や社会に振り回されず依存せず、自分の手で状況を作り出す成長のカギとなります。
働く変化を作り出す(肉体→知的→肉体への回帰)
人類の歴史を振り返ると、「働く」という行為は時代ごとに形を変え、肉体労働から始まり、知的労働の重要性が増す流れで進化してきました。それぞれの労働形態は、社会の技術、経済、文化の発展とともに変化してきたと言えます。
汗水流して働くことはつい数十年前まで共通の「美徳」とされてきました。それが産業革命以降、肉体労働に変わり機械が発達して人間の「身体」の出番が少なくなりました。
それに代わって科学者、エンジニア、金融業従事者、管理職などの「知的労働」が増え、高収入を狙うなら「知的に」という社会の流れができて今まで至っています。
この5年は、人類総出で働くことの意義について考えることを強いられました。
コロナで人に会えない時期、身体を使って働く人は思う存分働くことができませんでした。一方、当初は戸惑いもあったオンライン会議が今では当たり前になり、すっかり働く時間の中で知的労働の時間が増えてきました。
しかし、それから間もなくAIが日常の中に当たり前に活用されるようになり、それまで「知的労働者」だと言われていた仕事があっという間にAIに取って代わられるようになってきました。このパラダイムシフトはほんの5年程度のうちに起こったことです。
そしてこの知的労働のうちAIに任せる仕事が何なのか、少しずつ浮き彫りになりますが、大きな流れは変わらないと思われます。
人間の得意分野は何なのか。
絶対的に言えることは「身体」があることです。
地面に足がつけられることです。
演じることができることです。
身体を持つ人間として、何が求められるようになるのかについて、即興演劇にヒントがあると考えています。
即興演劇とパラダイムシフト
パラダイムとは考え方の枠組みや価値観のことです。
このパラダイムを変化するパラダイムシフトがこれまで以上に重要になります。
つまり、自分の中の当たり前(自分のルールブック)を大胆に書き換えて行く作業です。それには、「即興性」がキーワードです。
即興演劇の強みは、「何も決まっていない状況」に自ら飛び込み、考えをすぐ実行に移す能力を育むことにあります。
例えば、演者が突然「砂漠でオアシスを見つけた旅人」という設定を提示された場合、その場の状況に基づき、即座に行動や言葉を紡ぎ出さなければなりません。
このプロセスでは、失敗を恐れず、新しいアイディアを柔軟に受け入れる姿勢が求められます。
アイディアを柔軟に受け入れる姿勢(Yes, and...)が重要です。これは、他者の意見やアイディアを否定せずに受け入れ、それを土台に新しい発想を展開していく方法です。この姿勢は、職場でのチームワークや創造的な問題解決にも応用できます。
例えば、企業のイノベーションにおいては、固定観念を捨て、まったく新しい視点で商品やサービスを設計する必要があります。このとき、即興演劇のような「自由な発想」と「他者との協働」が大きな役割を果たします。
即興演劇と身体性
状況を柔軟に受け入れるときのポイントが「非言語」です。
例えば先ほどの「砂漠でオアシスを見つけた旅人」という設定を提示された場合、
「えーと、ここは砂漠で・・・暑い中ずっと歩いてきて・・・私は旅をしてきて・・・喉が渇いていて・・・」
と言葉で入っていても、身体使いがそのままでは設定を受け入れているようには見えません。一方、
「うわー、もう無理!カラカラ!!」
と言いながらバタリと倒れる。ふと顔を上げると目を輝かす。
「あ、あ!み・・・水!!!!」
と言いながら自衛隊張りのほふく前進でオアシスに向かい、ワニのように這いつくばって喜びの涙を流しながら水を飲む。
くらいやれば間違いなく設定を受け入れていると見えるでしょう。
要するに言葉ではなく、状況をそのまま受け入れる回路を自分の中に育むことができるのです。
受け入れる「反応力」と「表現力」を備えた身体を持ち合わせることが人間の開発できる強みになりうる点だと思います。
おわりに
変わり続ける現代社会で、これまでの「心地良さ」から一歩抜け出し、新たな発想と行動の自由を自ら作り出し、日常の中で即興的なアプローチを試していくことで、これまで気づかなかった可能性やアイディアを発見できるかもしれません。
即興演劇を通じて、私たちは変化を恐れるのではなく、それを楽しみ、新しいパラダイムを創り出す力を身につけることができます。